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第4話 「盗んだ馬で」

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「ふわぁ~…おはよー」
「お、お目覚めか?」
「うん~」

翌朝、メイが目覚める頃にはホッドもジャルデュルも家を出た後だった。
ホッドはドラゴンによるヘルゲン襲撃を伝えるためにホワイトランに赴き、ジャルデュルは普段通りに製材所の仕事に向かったらしい。

メイは手早く身支度を済ませ、パンとチーズと水だけの軽い朝食を摂り始める。
意外に機敏な所作だな、とレイロフは思った。
普段はもっとのんびりした性質なのかもしれないが、今は一刻も早く「家」に帰りたいかに見えた。

「あ、そーだ。レイロフ~」
「ん?何だ?」
「こーゆー文字に見覚えない?」

そう言いながらメイは食事用の小さなナイフでチーズに何かの記号を書いて見せる。
それは、直線だけで書かれた文字…ルーン文字のようにレイロフには見えた。
しかし見覚えはなく、首を傾げる。

「いや…ルーン文字のようだが、こんなのは見たことがないな」
「そっかぁ」

メイは落胆し、肩を落としつつも、質問に答えたことについては「ありがと」と礼を述べる。
変なところで律儀な奴だな、と思うと同時にレイロフは質問の意図が気になった。

「この記号はいったい何だ?宝の在り処か何かか?」
「ううん。あたしの友達の、もしかしたら家族とか故郷の手掛かりになるかもしんない文字なんだってさ」
「故郷の手掛かり…かもしれない?」

レイロフは興味を覚えたが、しかしメイはと言うとそれ以上詳しく話す気はないようだ。
後片付けを済ませ、ジャルデュルが用意しておいてくれた旅道具を身に着けると、戸口へと向かった。

「じゃあね、レイロフ~。…長生き出来るといいね」
「ああ、お前も息災でな」
軽く手を振ってメイを見送る。

盗賊というのは好かないが、レイロフもまた反乱分子の一味だ。
メイとは住む世界の異なる者同士だが、お互い、常に討たれる危険と隣り合わせの立場だ。
そういう意味では似た者同士と言えるだろう。

おそらくもう二度と会うこともないし、そのほうがお互いのためだが、レイロフはあの少女が少しでも良き人生を歩めればいいと思った。

 

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晴れ渡った空が頭上に広がっている。
収穫の月も後半となったスカイリムの地は、暑すぎることもなく快適だ。
シロディールとの国境に近いことも理由の1つだろう。

 

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家を出て少し進んだところでジャルデュルに会った。

「おはよ~ジャルデュル」
「あら、おはよう。もう出発するの?」
「うん。色々ありがと。このマフラーとか」

メイが起きるまでに、ジャルデュルはマフラーと肩掛けポーチを用意しておいてくれた。
ポーチには旅に必要になるいくつかのものが入っている。

「いいえ、どういたしまして。
本当はもっと色々用意してあげたいんだけど…そんな装備で大丈夫なの?
家はどこなの?」
「リフテンだよ」
「まぁ、遠いのね!1人で大丈夫かしら?
そうだわ、レイロフに言って―――」
「へーきへーき!ホワイトランで馬車に乗るから。
…もう行くけど、その内何かお礼しに来るね~」

殆ど一方的に言い残して、メイはその場から駆け出す。
ジャルデュルのことは好ましく思ったが、それでもメイにとっては所詮は他人に過ぎない。
深く関わることは避けたい。
どんなに親切な者も、こちらが盗賊ギルドに所属していることを知った途端に掌を返す事など日常茶飯事だ。

(ま、その内何か持って来てあげよっと)

 

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「えーっと、リフテンはどっち…?」

 

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「まずこの橋を渡る…で合ってるかな」

リフテンに帰るには、まずはリバーウッドから北に伸びる山道を抜けなければいけない。
メイは以前に見たスカイリム全域の地図を思い出しながら、頭に道順を描く。
リバーウッドの西に広がる山脈の間を進むという方法もあったが、まずはホワイトランに寄りたい。
この道を抜ければホワイトランが見えてくる筈だ。

 

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ガサッ…

茂みが揺れ、地に落ちた葉っぱを踏み付ける音が聞こえた。

あ、やばい。
そう思った瞬間、黒い狼が飛び出して来た。
弓を射るには距離が近い。

その時、狼が甲高い悲鳴を上げた。

 

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「えっ?」
振り返ると、帝国軍の兵士が2人、弓を構えて狼を狙っているのが見えた。
彼らの内のどちらかが放った矢が、狼の脇腹に刺さっている。
致命傷には至らなかったようで、逆上した狼の攻撃対象がメイから兵士へと移る。

「大丈夫か!?」
「早く逃げるんだ!走れ!」

最初、自分を追って来た兵士かと思って身構えたメイだが、杞憂に終わった。
その時、立派な装備を纏った馬が目に入った。彼らの愛馬だろう。

 

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らっきー!ホワイトランまで行って馬を盗む手間が省けた!
ほくそ笑み、素早く馬の背に跨る。

 

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「あ!待て!止まれ!」

狼を始末した兵士が馬を盗んで逃げるメイに気付き、手に持ったクロスボウを向けて来る。
しかし時既に遅し。
メイを乗せた馬は、人間の足では辿り着けないぐらいの距離を稼いでいる。

弓で射るにも、馬に当たる危険を考慮してメイを狙えずにいる。
威嚇に放たれた矢が風を切る音が何度か聞こえたが、メイは止まることなく馬を走らせ続けた。

 

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山道を抜け、開けた場所に出た。
ホワイトランの街や、その周辺の農場が見渡せる。

メイは西に向かって馬を走らせる。

 

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途中で何度か危険な目にも遭ったが、やはり馬があると安全性は格段に増す。
上手く切り抜け、馬を走らせ続ける内に周囲の木々の色合いが変わって来た。

見慣れたリフト地方の景色だ

 

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リフテンの街が見えた時、メイは心底安堵を覚えた。
1週間ほど離れていただけなのに、とても懐かしく感じる。

 

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「お疲れ様!ばいば~い」

 

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盗人から解放された馬は何処かへと去って行く。
強く賢い馬だから、自力で持ち主のところに帰るのだろう。

 

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時間は既に夕刻に差し掛かっている。
頭上に広がる空は、早朝とはうって変わって鉛色の雲が立ち込め、まるでリフテンの街そのものを表しているかのようだ。
しかしメイは見慣れている筈のリフテンの街を眺めながら、懐かしい気持ちでいっぱいになる。

 

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「あ~、やっと帰って来たんだ」

路上の物乞い、柄の悪い喧騒、剣呑な様子で対峙する住人。
懐かしい風景を横目で見ながら、住み慣れたリフテンの街を進む。

途中、街の中でギルドの仲間に会わないかと期待したが、この日は見かけなかった。

 

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共同墓地の奥には、特殊な隠し通路がある。
これにはある仕掛けがしてあり、少しばかり難解なパズルを解かないことには開かない仕組みになっている。

つまり、一定以上の開錠術を持つもの以外は出入り出来ない通路だ。
ギルドに所属する者でも、自力でその技を身に着けない限りはここから出入りすることは出来ない。
メイはいつも通りに手早く開錠し、隠し通路を進んで行く。

 

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「たっだいまぁ」
狭い通路を抜け、広々とした貯水池に降り立つと、街に到着した時以上の安堵感と懐かしさがこみ上げて来る。
メイは、誰に対してというよりもこの場所に対して帰還を告げた。

 

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