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第2話 「寄り道しながら逃走」

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「行こう。急いだほうがいい」
「ふい~」
「何なんだ、その気が抜けるような返事は?」

軽口を叩きながら階段を降りていく。
メイはこれまでにも、大きな商館や警備の厳重な屋敷に潜入したことがある。
そういった場所は、大抵地下のどこかに外に脱出出来る隠し通路があり、メイはそれらを潜入のために利用した。

その経験から、このヘルゲンの砦もどこか外に通じる脱出口があると予測したため、何も言わずレイロフについていく。

「あ、ちょっと待って」
「今度は何だ?」

メイは来た道を引き返し、武器ラックに立て掛けてあった弓を手に取る。

 

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「剣は苦手だけど、弓は得意なんだ~。ニルインに教えて貰ったもんね」

 

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「あ、待って待って」
レイロフに追いつこうと、階段を駆け下りていく。

階段を降りきってレイロフと合流したところで、石壁が軋む音がし始めた。
身構えるレイロフに促され、後ずさる。
天井から埃や細かい破片が降ってきたかと思うと、建物そのものが崩れた。

 

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「うわっ」
「あわわわわわわわわ!?」

地鳴りのような音と、激しい振動。
どうやら先ほどのドラゴンが、この砦を破壊し始めているようだ。
階段を降りてくるのがあともう少し遅かったら、あの鋭い鉤爪に攫われていただろう。

「あ、危なかったぁ…」
「やれやれ…思った以上に急いだほうがよさそうだ」

視界を覆う粉塵が収まるのを待って、再び足を進める。
暫く進んだところで、半開きの扉から灯りが漏れているのが見えた。
今まで2人が通ってきた通路にもいくつか光源はあったが、あれほど強い光ではなかった。
それに部屋の中から複数の人間の話し声がする。

扉から離れた場所で足を止め、耳を澄ませながらレイロフのほうを見遣る。

「誰かいるよ」
「ああ、話している内容からして帝国軍だな。
中にいるのは3人といったところか。さて…」
レイロフは考え込んだ。

敵対する間柄とは言え、事態が事体だ。
ここは協力するべきじゃないか?

そう思い至ったレイロフは、自分が彼らを説得するからメイには隠れているように言おうとしたが―――…

 

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気付けば、先ほどまですぐ隣にいた筈のメイの姿がない。
見れば、扉に半分身を隠した状態で弓を構えているではないか。

よせ、と言う間もなく放たれる矢。
室内から短い悲鳴が響き、それに続いて何かが倒れる音。

「誰だ!?」
部屋から殺気だった声が聞こえる。
足音からして、今部屋の中で動いている者は2人。
1人はメイが仕留めることに成功したようだ。

「来たよ!」
メイが扉から離れ、レイロフの背後へと回り込む。
弓の腕前はなかなか達者だが、近接戦はそうでもないらしい。
何はともあれ、こうなってしまっては説得どころではない。

「くそっ!来やがれ!」
腰に下げていた斧を取り、応戦する。

 

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メイの援護もあって、無傷で切り抜けることが出来た。
完全に武装した相手との交戦とあって、多少の怪我は覚悟していたのだが、自分で言うだけあってメイはかなり腕のいい射手である。
初めに物陰から射た相手も、鎧から僅かに覗いている首筋を的確に狙い、一撃でソブンガルデ送りにしている。

その後も、レイロフが2対1という不利な状況で苦戦を強いられている時、帝国軍の背後へと回り込み、無防備な膝を撃ち抜いた。
相手が怯んだその隙にレイロフが素早く胴を薙いだ。

 

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「何かいーもんないかな~。
お、回復薬発見!
他には他には?」

その当人は今、部屋を物色して回っている。
どうやらここは貯蔵室のようだが、どういう場所に目ぼしいものが収納されているかについて、
知り尽くしているかのような手際の良さだ。
いや、実際そうなのだろう。

彼女は自分をラグド・フラゴンの出身だと名乗った。
ラグド・フラゴンと言えば、リフテンの街の地下に存在する盗賊ギルドの本拠地だ。
出身やこれまでの言動からして、メイもまた盗賊であることは疑いようがない。

(盗賊にしちゃ随分と好戦的だな)
レイロフは内心で呟いた。

 

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部屋の中にはおびただしいほどの血を流して倒れている死体が3人分。
その血はまだ生々しい臭いを放ち、それが部屋中に充満しているのだ。
まともな小娘なら意識を保っていることさえ難しい惨状だ。

しかしメイは全く意に介した様子もなく、目ぼしいものを次々と「発掘」していく。
レイロフとしては、こんなコソ泥のような真似はしたくはないが、状況が状況だけに薬や食料などはあるに越したことはない。

 

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「よし、先を急ごう」
「あ、待って待ってー」

先ほど入って来たのとは反対側にも出入り口があり、そこから部屋の外へと出られた。
その先にあった階段を降りていくと、据えた血と死臭の充満する拷問部屋に出た。

そこで2人のストームクローク軍の兵士と再会した。
レイロフが仲間と再会を喜び合っている時、視界の端でメイが何やらおかしな動きをしていることに気付き、そちらに視線を向ける。

 

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「ん~?誰か死んでるねー…魔術師?
何かいーものがあるみたい」

檻だけあって、それなりに凝った造りの鍵が取り付けられている。
どこで拾ってきたのか、ロックピックを取り出し錠前を弄り始めるメイ。

 

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キィ…

「お邪魔しま~す」
檻は簡単に開いた。
檻の中には、魔術師の死体が横たわっている。
そのすぐ側には魔法書とポーション、それに数枚の金貨。

 

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「魔法書発見、らっきー。くししっ」
魔法書というのはそれなりに高値で売れる。
思わぬ収穫につい笑みが零れる。

「おーい、お前も早く来いよ」
「はぁ~い、今行く今行くー」

 

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途中で帝国軍と出くわすことも何度かあった。
何とか切り抜けたものの、再び建物の一部が崩れて、その時に振って来た大量の瓦礫がパーティを分断した。

 

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後方を守っていたストームクロークの兵士2人が、瓦礫の山の向こう側へと取り残されたのだ。
苦々しい表情で舌打ちするレイロフ。

「せっかく一緒にここまで来たってのに…!」
「大丈夫大丈夫、他に抜け道なんかたっくさんあるってば。それより、早く行かなきゃあたし達も危ないよ!」
仲間の身を案じる彼に、メイは無責任な励ましの言葉をかけながらも、自分だけは助かりたいという本心がダダ漏れだ。
先ほどまで散々寄り道をして来たというのに、今度は彼を先へと促す。

しかし、メイの言う通りここで立ち止まっているわけにはいかない。

 

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「…そうだな。あいつらが他の抜け道を見つけてくれることを祈るよ。
にしても、小娘のくせに随分と人殺しに慣れてやがるな?
聞いた話だと、盗賊ギルドは殺しはご法度なんじゃなかったか?」

「うん、殺人はお金になんないから出来るだけしちゃダメなんだってさ。
でも、今はギルドのお仕事中じゃないもんね。
だから、あたしを無実の罪で処刑しかけた奴を殺すのは、あくまで個人的な趣味みたいな感じ?」

「な、なるほどな」

レイロフは呻くように言った。
いくら敵対している相手とは言え、命を奪うことをあまりに軽く考えているこの小娘に空恐ろしいものを感じた。
いずれ心身が成長した時に、自分のしたことを振り返り罪の意識に苛まれるのだろうか。
あるいは、そういう感性が全く育つこともなく大人になるのか。

(もしかしたらドラゴンの餌として置いてくるべきだったか?)
ふと、そんな考えが浮かんだ。
いや、今からでも遅くはない…

 

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「お前に背を向けるとその内刺されそうだな」
「え~?そんなことしないよぉ。
レイロフのことは好きだもん、死んで欲しくないからあたしも頑張って助けてあげるよー」
「…はぁ?」

何の気なしに呟いた言葉に対し、返って来た言葉に面食らったレイロフは思わず足を止めてメイを振り返った。
メイは「うん?」と首を傾げてこちらを見返している。

「だってさ、レイロフ、さっきあいつらに…帝国の奴らに話しかけようとしてたよね?
ダメだよ、あーゆー時は先手必勝。
仮に話が通じるフリしても、後で用済みになったら絶対にあたし達のこと殺しちゃうよ。
だってあたし達、囚人だもん。ヒトじゃないんだもん、ゴミみたいな感じ?」
「それも一理あるな」

メイの言葉に素直に頷く。
あまりに捻くれているきらいはあるが、彼女の言うことも尤もだと思えた。
意外と考えなしというわけでもなく、それどころか一時的な同行者に過ぎないレイロフへの気遣いらしきものもあったのだろうか。

おそらく、メイは論理観や善悪の区別よりも「好きか嫌いか」といった感情優先で動く性質なのだろう。
根っからの悪人ではない…らしい。多分。

 

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「あっ!小銭入れめっけ!」
平気で墓前から供物を奪うほどに手癖が悪いことは否めないが。

 

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どのぐらい歩いただろうか。
どこからともなく、冷たくも爽やかな風を感じた。

見れば、洞窟の壁の亀裂から光が差し込んでいる。

「やった!ここから外に出られるよ!」
「ああ、これなら何とか通れるな」

 

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夕刻の弱々しい日差しが、浅い雪の残る大地を照らす。

「さ、寒いっ…」
「どうやらヘルゲンの街より若干標高が高い場所にいるらしいな」
気温は洞窟の内部よりかなり低い。
身震いするメイとは対照的に、レイロフはこの程度の気温など寒さの内に入らないという風情だ。

「この先にリバーウッドって村がある。
そこまで行けば俺の従姉のジャルデュルが助けてくれるから、もう少しだけ頑張れよ」

 

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「う、うーん…うん」
渋々、といった調子で頷くメイ。
既に疲弊してはいたが、リバーウッドまで着けば暖かい暖炉や食事にありつけるだろう。
それは、ここで野宿して夜を明かすよりも遥かに魅力的だ。

レイロフの後を追って歩き始めた。

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